細胞の損傷と修復、細胞の修復力を上げる方法についてわかりやすく解説しています。
体が細胞から若返る仕組みとして、細胞を修復する生活習慣を具体的に解説しているので、最後まで読んでいただけると幸いです。
体のすべては細胞からできている
人体は37兆個の細胞からできており、細胞の中に遺伝情報を伝えるDNAが存在します。
老化の原因が細胞の損傷であるように、細胞やDNAはアンチエイジングにとって非常に重要です。
見た目年齢は細胞のダメージ量で決まる
見た目が若い人と老けている人は細胞のダメージ量が違い、見た目が若い人はダメージが少なく、老けている人はダメージが多いです。
「見た目年齢は細胞のダメージ量で決まる」。この認識は重要です。
なぜなら、誤った情報に振り回されたり、アンチエイジングを間違って続けてしまう可能性があるからです。
例えば、お肌の細胞です。
お肌には2種類の幹細胞「表皮幹細胞」と「真皮幹細胞」が存在し、真皮幹細胞は、コラーゲンやエラスチン、ヒアルロン酸などを作り出す「線維芽細胞」に分かれます。
お肌を綺麗にしたいからといって、肌細胞だけに働きかけるようなスキンケアは効率が悪く、本当のアンチエイジングとはいえません。
本物の若さを手に入れるには、白髪に関わる「色素細胞」、薄毛に関わる「毛母細胞」、ダイエットに関わる「白色脂肪細胞」と「褐色脂肪細胞」、姿勢やスタイルに関わる「筋細胞」や「骨細胞」など、全身にあるすべての細胞に働きかける必要があります。
「お肌のスキンケアだけで精一杯なのに、全身すべてなんて無理!」と思いますか?
じつは部分的なエイジングケアより、全身の細胞を意識したほうが簡単で効果的なんですよ。
なぜなら、細胞のダメージだけを意識して生活するだけだからです。
「これは細胞がダメージを受けるからやめておこう」や、「これは細胞のダメージを修復するからやろう」のように、細胞の「損傷」と「修復」を基準にして生活するわけです。
細胞の「損傷」と「修復」を繰り返している
当たり前のこと過ぎて、あまり気にしたことがないかもしれませんが、私たちの体内では細胞の「損傷」と「修復」を繰り返しています。
もっとも分かりやすいのは「ケガ」ですね。
すり傷などのケガは数日で自然と治ります。ケガで細胞が損傷しても、自然に修復されているからですよね。
目に見えないので実感しづらいですが、私たちの体内でも同じように、細胞が損傷したら、その細胞を自然に修復しているのです。
すり傷ぐらいならいいですが、細胞の損傷のダメージが大き過ぎると、修復が追いつかない状態になります。これが老化の正体です。
- 損傷 < 修復 = 見た目年齢が若い
- 損傷 > 修復 = 見た目年齢が老けている
具体的な例では、20代で白髪が生えてきた人は細胞の損傷に修復が追いついていません。
逆に、50代で白髪が無いという人は、黒髪の元「メラニン」をつくる「メラノサイト」という色素細胞が正常に機能しているので、細胞の損傷に修復が追いついている証拠です。
白髪は「老化のバロメーター」です。白髪が多いほど細胞の損傷ダメージが大きい、もしくは修復力が低く、細胞の修復が追いついていないと考えられます。
つまり、白髪の本数が体全体の老化を表しているということです。
ちなみに、細胞の損傷に修復が追いつくようになると白髪は黒髪に戻るので安心してください。そういう意味でも白髪は「老化のバロメーター」になるのです。
細胞の修復力を上げる方法
生活習慣によって、細胞の修復力を上げることができます。ただし、その前に細胞が損傷する原因を知って、できることから改善してみましょう。
細胞の修復力が上がっても、細胞の損傷ダメージが大きいままでは意味がありませんからね。
栄養バランスの良い食事
月並みですが、やはり栄養バランスの良い食事は大事です。
食事から摂った栄養は細胞の修復に使われるからです。
栄養学でいう、3大栄養素は次のとおりです。
- 糖質
- 脂質
- たんぱく質
3大栄養素に「ビタミン」「ミネラル」を加えて5大栄養素、さらに「食物繊維」も加え、6大栄養素とされる場合もあります。
これは栄養学的に良いとされている栄養バランスですが、アンチエイジング的には不十分であり、誤解を招く栄養バランスです。
糖質の摂り過ぎは糖化の原因になりますし、脂質は脂肪酸の種類、たんぱく質はアミノ酸の種類が明示されていないからです。
アンチエイジング的には次のとおりです。
- 必要最低限の糖質
- 良質な油からとる脂質(脂肪酸)
- アミノ酸スコア100のたんぱく質
- 脂溶性ビタミンと水溶性ビタミン
- 主要ミネラルと微量ミネラル
- 不溶性食物繊維と水溶性食物繊維
- その他、機能性成分(カロテノイド・ポリフェノールなど)
特に、脂質(脂肪酸)は細胞膜に含まれ、細胞をつくる材料になります。
良い油からつくられた細胞なのか、悪い油からつくられた細胞なのかの違いは非常に重要です。
また、「まごわやさしい」の食材を日頃から意識することで栄養バランスの偏りを防げます。
良質な睡眠
細胞の修復にもっとも効果のある成長ホルモンは、眠りについてから1時間後に分泌されるので、良質な睡眠はアンチエイジングの基本です。
入眠直後に質の良い深い睡眠が十分にとれると、成長ホルモンが多量に分泌されます。成長ホルモンは、子どもの成長を促し、大人では傷んだ細胞を修復しアンチエイジングをもたらします。
引用:スマート・ライフ・プロジェクト(厚生労働省 健康局 健康課)
また、成長ホルモンも脂質(脂肪酸)を材料としてつくられるため、やはり良い油を心がける必要があります。
適度な運動
運動は、ウォーキングなどの「有酸素運動」、筋力トレーニングなどの「無酸素運動」、そして「ストレッチ」の3種類あり、それぞれに異なる効果やメリットがあります。
ただ、個人の体力や年齢によって「適度」の基準が異なるため、あなたが無理なく続けられる程度の運動がおすすめです。
運動のやり過ぎ(過度な運動)は老化の原因「酸化」を招いてしまうので、無理なく楽しみながらできる運動が望ましいでしょう。
お風呂はお湯に浸かる
お風呂をシャワーで済ませる人も多いですが、入浴(お湯に浸かる)することで様々な効果があります。
もっとも分かりやすい入浴効果は、血流が良くなる「血行促進」ですね。
血行促進というと、「なんだ、そんなことか」と思われるかもしれませんが、じつは細胞にとって非常に大切なことです。
血行が良くなると、それまで行かなかった末梢の毛細血管にまで栄養素と酸素を運ぶことができ、細胞が代謝を行って出た老廃物や二酸化炭素なども体外に排出されやすくなるからです。
例えば、お肌のためにビタミンCが多く含まれる野菜、ブロッコリーを食べたとします。
- 摂取:お肌のためにブロッコリーを食べる
- 消化:口腔、胃、小腸などでブロッコリーが消化される
- 吸収:ブロッコリーのビタミンCは小腸の上皮細胞に吸収される
- 代謝:肝臓によって代謝や調整が行われる
- 利用:血管やリンパ管、毛細血管を通って、細胞にビタミンCが届く
- 排泄:体内で余った栄養素や老廃物は、肝臓や腎臓などの臓器を通って体外に排出される
5番目の「利用」のところで、末梢の毛細血管まで血流がなかったら、何を食べても細胞に栄養素が届くことはないのです。
小腸や肝臓に近い内臓の細胞には届きやすいですが、顔の皮膚や頭皮、指先など、末梢の毛細血管が通っている細胞には届きにくいため、血行を良くする必要があるわけですね。
ファスティング
ファスティングとは「断食」や「絶食」という意味で、自ら飢餓状態をつくることで細胞のオートファジーが活性化し、細胞の新陳代謝が行われます。
オートファジーとは「自食作用」という意味で、細胞自らが細胞内にある老廃物などを分解し、古い細胞から新しい細胞に作り変えられることです。
大阪大学大学院医学系研究科の井本ひとみ 特任助教(常勤)(遺伝学)、中村修平 准教授(遺伝学/大学院生命機能研究科 細胞内膜動態研究室/高等共創研究院)、吉森保 教授(遺伝学/大学院生命機能研究科 細胞内膜動態研究室)のグループは、猪阪善隆 教授(腎臓内科学)、微生物病研究所 原英二 教授らのグループと共同で、オートファジーを介して細胞の老化を遅延させる新たなメカニズムを明らかにしました。
これまでに研究グループは、オートファジーを抑制する因子Rubicon(ルビコン)を発見し、Rubiconの抑制によるオートファジーの活性化が個体の老化を抑制すること、またモデル動物の加齢性疾患を抑制して健康寿命を延長することを明らかにしてきました。
引用:日本医療研究開発機構
わかりやすくいうと、お腹が空いているときに細胞が若返っているということです。
体内にある37兆個の細胞1つひとつが若返るのですから、アンチエイジングの効果が高くて当然といえるでしょう。
参考 16時間ファスティングの効果とは? やり方と注意点についても解説
まとめ
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
「白髪染めシャンプー」や「ほうれい線クリーム」など、部分的なエイジングケアを否定しているわけではありませんが、「細胞から若返る」ということも意識してみると良いですね。